概要と基本情報
フラグシップ機として、SONYの持てる技術をつぎ込んで開発された、ハイエンド・ヘッドホンです。2016年後半に発売されてから5年余りが経過しましたが、フラグシップ機としての地位は変わっていません。
最終的な組み上げと検査は、厳しい品質管理の下、日本国内で行われています。SONYの看板を背負ったヘッドホンとして、妥協しない姿勢がうかがえます。
MDR-Z1Rは、径70mmの大型ドライバーユニットを搭載し、再生周波数帯域は 4Hz ~ 120kHz を誇ります。カタログスペックだけでは語れないものもありますが、ほぼ同時期に発売されたSENNHEISERの「HD800S」は 4Hz ~51kHz ですから、MDR-Z1Rの再生周波数帯域の広さがわかります。
インピーダンスが64Ωと、やや高めです。音圧感度は標準的なので、直にプレイヤーへ接続してもそれなりに鳴ると思いますが、なるべくならヘッドホンアンプを使う方がMDR-Z1Rの本領を発揮できるのではないかと思います。
付属ケーブルが2種類ある通り、アンバランス接続はもちろん、バランス接続でも使用できます。ただし、社外製品でリケーブルする場合はプラグの形状に注意が必要です。
メーカー | SONY |
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製品名 | MDR-Z1R(製品情報ページ) |
発売日 | 2016年10月29日 |
形状 | オーバーヘッド |
ハウジング | 密閉型 |
リケーブル | 可能(両出し) |
駆動方式 | ダイナミック型 |
ドライバーユニットサイズ | 70 mm |
インピーダンス ※1 | 64 Ω |
音圧感度 (能率) ※2 | 100 dB/mW |
最大許容入力 ※3 | 2,500 mW |
再生周波数帯域 ※4 | 4 Hz ~ 120kHz (120,000 Hz) |
重量 | 約 385 g |
付属ケーブル | 3.5mmアンバランス(3.0m)銀コートOFC線 4.4mmバランス(1.2m)銀コートOFC線 |
※1.インピーダンスが高いほどノイズが発生しにくいが、音量を出すためにより大きな出力が必要になる。
※2.音圧感度が高いほど、少ない出力で大きな音が出る。100db/mW前後が標準的。
※3.最大許容入力が大きいほど、大きな出力をかけても、音割れやひずみが発生しにくくなる。
※4.再生周波数帯域は、鳴らすことができる音の範囲。人間が聞き取れる音は一般に、20Hz ~ 20kHz(20,000Hz)と言われる。しかし、聴覚は未解明な部分もあり、聞き取れない音でも音楽の印象に影響を与えている、とする主張もある。
ネックはお値段で、ソニーストアでは22万円、市場価格でも20万円前後なので、なかなか手を出しづらい。
しかしどういう理由なのか、「eイヤホン」で、まれに大幅な値下がりが起きます。売り切れるのも早いので、狙うならチャンスを逃さないよう、頻繁にチェックしましょう。
パッケージとフォルム







レビュー
厚みのあるイヤーパッドは固すぎず柔らかすぎず、側圧も適度で、装着した瞬間からとても良いフィット感があります。2、3時間程度なら問題ないでしょう。それより長くなると、さすがに痛くなってきますが。
遮音性もなかなか良い感じです。「騒音」レベルはどうにもなりませんが、少々の生活音くらいならシャットアウトしてくれます。
ただ、この甘食みたいなデザインは何なんでしょう。どういう意図があるのか、謎です。

まずはアンバランス接続で聞いてみます。
とても自然な鳴り方をします。音の解像感も良いですが、モニター機の分析的に音を切り刻むような感じとは違います。音を適度に分離させつつも、音楽としての一体感は損なっておらず、あくまでリスニング機として鑑賞に重きを置いている感じです。
イヤーパッドの厚みゆえか、音場も広く感じます。
ケーブルが良いのか、ノイズのようなものはほとんど感じません。
音のバランスはほぼフラットですが、高音・中音に比べて、低音がわずかに強く出ているような気がします。
高音は上までよく伸びています。それでいてキンキンと刺さるような感じもなく、たいへん聞きやすい。
中音は、ほんとうに普通。飾り立てるということがなく、ありのままを表現しているように思います。
低音も下までしっかり鳴ります。しかし、ことさら強調されているわけではなく、地に足がついている感じです。
総じて言うと、曲調に対して素直で無理がなく、自然な鳴り方です。味付けをしないのでジャンルの面で得意不得意が少なく、どんな音楽にもそつなく対応できる印象です。
たいがいのヘッドホンは何かしら音に特性があるものです。その点で、リスニング機としてこれほど「素材そのまま」な音楽を聞かせてくれるヘッドホンは、MDR-Z1Rのほかには中々ないと思います。
逆に言うと、尖ったところがないので、刺激には欠けるかもしれません。
なお、アンバランスケーブルのプラグは「ステレオミニ(3.5mm)」なので、アンプ側のソケットが6.3mmの場合は『FURUTECH CF63-S(R)』などで変換する必要があります。

続いて、バランス接続ケーブルで聞いてみます。プラグはL字の4.4mm5極で、ケーブルの長さは1.2m。ウォークマンなどのDAPでの使用を想定しているようです。据え置き機で使うにはちょっと不便。
音のフラットなバランスや、音楽の「素材そのまま」感は健在です。
アンバランス接続と比べると、音のにごり(ノイズとは違う、音が微妙にブレるような感覚)がなくなりました。音が定まって、とても洗練された印象になります。
これは、味付けされたという意味ではありません。楽曲の本来の姿により近づくことで、その曲の魅力が引き出された形、もともとの「色」や「味」が濃くなったような感じです。ですから、変化の仕方はそれぞれの曲ごとに違っていて、クラシックは芳醇でリッチな感じになりますし、J-POPはリズミカルで乗りがよくなります。
バランス接続、聴き応えがあって、おすすめです。